⑦脱公務員を振り返ってみた(5)

公務員時代の仕事と待遇

(9)ハローワークでの仕事

ハローワークの仕事は、仕事を探している人に仕事の紹介をしたり、雇用保険をもらう手続をする役所というイメージでしょう。

ハローワークは窓口官庁、分野でわけるなら福祉系の役所です。
今は一部を残して廃止されましたが、「俸給の調整額」という俸給(基本給にあたるものの一部)の上乗せがありました。

これは勤労環境その他の勤労条件著しく特殊な仕事について支給されるもので、(危険な)窓口手当ということで支給されていました。ハローワークの仕事は、昔は特殊な仕事と思われていたようです。

(10)仕事は幅広い

雇用保険の手続、事業所の雇用保険の手続、公会計業務、内部監査、事業所監査、給与計算、職業相談、職業訓練、求人受理、助成金受理など、失業保険をもらう手続を中心に色々な仕事をさせてもらいました。

いわゆるジョブローテーションだけではなく、道内ローテ―ション(転居を伴う転勤)までもある、しっかりとした人事異動です。

その中でも一番長く経験したのが雇用保険給付業務(いわゆる失業保険をもらうための手続)。

ハローワークは窓口官庁。失業した人が次の仕事を探すため、仕事が見つかるまでの生活費として雇用保険(いわゆる失業保険)をもらうための手続をしたり。

雇用保険の手続きや職業相談のために、離職理由の聞き取りを業務として行うのですが、その中人間関係や労使のトラブル、将来のことを相談されます。

一般に、すべての役所の所掌する業務を正確に把握している人はいません。私も同様です。自分の所属する役所の業務を把握するだけでも精一杯。とても他官庁の仕事の概要まで把握することはできません。

そのため、ハローワークの業務では、窓口でじっくりと相談をする過程でなんでも聞かれます。隣接業務の年金・税金の話だけではなく、法律問題・刑事事件の話まで。必要なことを聞きとって、相談すべき場所を教えてあげる、これも大事な仕事でトラブルを防止するためには重要です。

思っているほど、法テラスや各種公的団体が実施している無料相談の存在は、知られていないようです。誘導する仕組みづくりや周知方法が望まれます。

(11)でも、税理士と関係する関係は、ほぼありません。

ハローワークは一般の役所であるため、会計は公会計。

税理士の中心業務である「企業会計」は、事業所調査で帳簿等をチェックするごく一部の業務を除いて携わることはありません。

また、税務手続きは年末調整以外ありません。

そのため、税理士試験受験中は、実務のイメージが持てずに苦労しました。

もちろん、ハローワーク在職中は一般企業との接点を持つこともできません。

窓口官庁で誰が見ているかわからないなか、行政の信用を失うことはするわけにはいきません。

そのため、税理士として独立するための集客を、在職中に行うことは簡単にはできないのです。

民間企業だと、同業者団体の会合や関係企業取引先企業を通じて、顔と名前を売ることはできるかもしれませんが、一般の役所だとなかなか難しい。

また、転居を伴う転勤がある公務員の場合は、地域で活動してコミュニティに入っても、転居により3年程度でリセットされる。

脱公務員はなかなかに難しいものです。

北海道労働局が入居する札幌第一合同庁舎

厚生労働省の地方出先機関の一つであり、全都道府県にそれぞれ設置されている。

労働基準監督署、公共職業安定所(ハローワーク)の上部機関にあたる。

税理士・社会保険労務士 岩田 圭史